店舗における店長やエリアマネージャー、スーパーバイザーの役割と店舗運営の主な業務内容と流れを、業務改善ポイントとともに解説していきます。そして店舗運営に効果的な4つの業務効率化ポイント(業務プロセスの見直し、ナレッジの共有、業務をデータ化、システムの統合)をご紹介します。
「1分でわかる店舗分析」
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Topics:
1. 店舗運営、その主なキーパーソンは?
2. 店舗運営の主な業務内容
① 開店・閉店業務
③ 仕入・在庫業務
④ 売上管理業務
⑤ スタッフ管理/教育業務
⑥ 販売促進業務
⑦ 顧客管理業務
ポイント2 ナレッジの共有
ポイント3 業務をデータ化
ポイント4 システムの統合
1. 店舗運営、その主なキーパーソンは?
店舗運営とは:
小売店を実際に運営していく業務全般について管理することを指します。
小規模店舗では、店長が店舗運営の全てを担います。複数店舗を持つような大企業においては、店舗は店長が運営し、本社に在籍する店舗運営管理者がエリアマネージャー(スーパーバイザー)として総括する形態を取る体制が一般的です。
キーパーソン#1:店長
店舗運営責任者である店長は、売上への責任は勿論、非常に広範な業務マネジメントを求められる、忙しいポジションです。
店舗の開店・閉店業務、仕入・売上管理などのルーティーンワークに加え、スタッフ管理・調整、接客業務の管理・指導、店頭販促企画、店舗の衛生・安全管理など、どれも重要なものばかりです。
特に昨今、労働力の流動化やコロナ禍による収益確保ゆえの人員整理など、貴重な人材の確保・維持が店舗運営にとってひとつの大きな課題となっています。販売スタッフの確保やモチベーション維持は企業全体での対策が勿論重要ですが、店長の存在・指導もまた大きなポイントとなります。
キーパーソン#2:エリアマネージャー/スーパーバイザー(AM/SV)
担当店舗の売上管理と運営指導を担うエリアマネージャーは、本社と店舗の橋渡し役・コミュニケーターとしても大事なポジションです。
本部から店舗への情報伝達、個店運営上の課題抽出と指導、他店舗の取り組み成功/失敗例の共有、店舗スタッフへのケアなど、店長の店舗運営を多岐に亘ってサポートします。
また、売場で起こっている顧客動向や課題、所感などを本部へフィードバックし全体施策に反映していく役割も求められます。本社・店長双方の視点を持つことが大きなポイントといえそうです。
2. 店舗運営の主な業務内容
① 開店・閉店業務
店舗を開く・閉めるといってもその業務は多岐に亘ります。以下はその一部ですが、これらを毎日遂行するのは「慣れが必要」として、経験値や能力に依存し過ぎるのはリスクを伴います。タスク管理を行って着実にひとつひとつを遂行するフローづくりが有効です。
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開店前:
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店舗内外の備品確認
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店舗全体の感染予防対策チェック(スタッフの健康状況把握を含む)
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レジ立上げ(レジ内釣銭管理)
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商品チェック(売場陳列、在庫確認、荷受確認)
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朝礼(売上状況、今日の予定、本社からの伝達事項共有) など
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閉店後:
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レジ締め(売上集計、レジ内釣銭管理)
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商品チェック(在庫確認)
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本社からの通達確認(新商品情報、キャンペーン/セール情報、VMD指示など)
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翌日のシフト確認
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店舗内外の掃除や整頓
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報告書作成・提出 など
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店舗業務の効率化と売上最大化へ【データ活用の豆知識】開店・閉店ミーティング
② 接客業務
店舗の売上を最大化させるために必須なお客様への接客業務。質・量の充実が求められますが、その改善は非常にチャレンジングな取り組みです。
接客の「質」においては、商品知識、顧客ターゲット把握、競合類似商品の理解度、自社キャンペーン/セール情報も含めた自社商品売れ筋傾向など、広範な情報量をスタッフがどのくらい咀嚼できているかがポイントになってきます。
一方、接客の「量」においては、接客時間、話術(シナリオ)、購買までの通過ポイント設定(商品特長アピール、利用シーン提案、試着案内、サイズ違い・色違い提案など)など、お客様の購買を決定づける一連のプロセスの整理がポイントです。
いずれの場合も、ベテランスタッフや接客業務が得意なスタッフはこうした要素を難なくこなす傾向にあり、そうした良い点を店舗全体に並列化させたい、と本社も店長も考えることでしょう。成功事例だけではなく、スタッフの性格・長所を活かし、不足点を補う接客指導も必要となってきます。
【業務改善のヒント】
スタッフの接客業務を店舗全体の視点で体系化し、どの接客領域をカバーすべきか検討すると良いでしょう。
③ 仕入・在庫管理
仕入管理は、店舗の販売商品の在庫回転率や適正在庫数を見極めながら、人気商品や季節商材などを発注し、品ぞろえをキープし販売機会の最大化を目指します。在庫切れによる販売機会損失のリスクを回避しくことが求められます。
在庫管理は、店舗の在庫状況を把握して商品を補充する業務になります。上記仕入業務と密接に関連し、在庫回転率や売れ筋傾向、本社からの販売強化指示などを念頭に置きながら需給バランスを取る必要があるため、難易度の高い業務です。
両業務は合わせ鏡のような存在です。共に地域特性やターゲット層との合致具合、売場環境、年中行事などを把握・考慮することが大事ですが、そのためにはそれら要素を精緻にデータ化して傾向値を参照しやすくしておくと良いでしょう。
④ 売上管理業務
売上管理は、文字通り売上を管理する業務です。店舗売上を時系列で追いかけて傾向を導き出して効果的な販売策に落とし込んだり、売上内容・量の分析によって発注業務やスタッフシフトの改善などにも貢献します。
売上というと、数値、主にPOSデータが最初に思い浮かぶと思いますが、売上は様々な要素が積み重なった結果に過ぎません。
【業務改善のヒント】
売上を導き出した要素はなにか―――客単価、購買件数、来店客数、陳列商品内容、VMD、店内動線、BGM、照明、SNSでのトレンド、メディアPR… 一概にはいえませんが、売上は様々な要素の複合的な結果であること、その因数分解に売上アップのヒントが必ず潜んでいると意識することが重要です。
⑤ スタッフ管理/教育業務
スタッフ管理は勤怠管理やシフト調整、スタッフのケアなどを、スタッフ教育は指示・指導やスキル評価などを含みます。店舗で働く従業員に関する全ての業務を指します。
近年は勤怠とシフト調整が統合されたツールを導入している企業が多く、管理が容易になってきているとは思います。また、コミュニケーション・ツールも充実していて、若い世代は特にデジタル・ネイティブなため、チャットやメッセンジャーに柔軟に対応しています。
しかしその一方で、働くことへの意識や志向、メンタルでの落ち込み具合、デジタル・ツール上では本音が見えづらいなど、一人ひとりが異なる悩みやモヤモヤ感を持って業務にあたっている傾向も少なからず見受けられます。ここを企業全体として問題視できているかどうかで、従業員の定着率や活気は大きく異なり、結果として売上や顧客満足度に反映されるだけに、ないがしろにできない業務といえるでしょう。
⑥ 販売促進業務
店舗売上を上げるためには、店頭での販売を促進する必要があります。前述②の接客業務が代表例ですが、展示ディスプレイの工夫、POPによる訴求、VMDへの意識、商品訴求演出(デモ販売、店内放送などのインストア・プロモーション)など、店舗で行う販売促進には様々な手法があります。
そして今や、デジタル空間でのアプローチも当然のこととして取り組んでいる企業様が大勢を占めるようになりました。ECサイト、企業アプリによる会員囲い込み、CRM(会員へのメール配信、アプリ経由でのクーポン配信やプッシュ通知)、LINEなどを使ったメッセージングなどが例として挙げられます。お客様に有益・魅力的な情報を提供し利用してもらうことで、自社のファンになってもらい、LTV(Life Time Value | 顧客生涯価値)を最大化していく取り組みです。
【業務改善のヒント】
デジタル上での販促と店舗のそれは全くの別物と考える方もいらっしゃるかもしれません。しかしそれでは売上の最大化につながりません。デジタル・店舗それぞれの販促の良さを活かし、不足点を補完することが肝心です。たとえば、デジタルは「気づき」に重点を置いたメッセージングを展開し、店舗は「体感」に重点を置いた活動を展開すると、お客様の買物体験が地続きになり、販促につながることが期待できます。
⑦ 顧客管理業務
CRM(Customer Relationship Management)とも呼ばれる顧客管理。お客様の基本情報はもとより、購買履歴やECへのアクセス状況、デジタル・プロモーションの接触状況などを履歴として保持し、顧客ごとに最適な買物体験を提供することで、お客様をファン化していくことを意図しています。
「コロナ禍によって、お客様が買物時に人との接触を嫌がるようになった」として、EC利用率の上昇、セルフレジやタッチレス決済による非接触販売など、お客様と販売者が触れる機会を物理的に減らす取り組みが多くなりました。しかし、その傾向を本当にそのまま鵜呑みにして良いのでしょうか?
たとえば、心理学に「ゲインロスの法則」というものがあります。これは、一旦断わられた事象がその後肯定に転じると、人はその肯定を受け入れやすい、というものです。
お客様から値引きを懇願された際、スタッフが「これ以上はお安くならないんです」と一旦断ります。そして「しかし、ダメもとで店に確認してきます。少々お待ちください」と言ってバックヤードに入り、程なくして戻り「特別にお値引きさせていただきます!」とお伝えすると、購買の敷居が低くなる…ただのテクニックだといえばそれまでですが、これはデジタルでは再現することが難しいシチュエーションです。そしてこの体験がお客様に好意的に残れば、その後の継続性(ファン化)が高まる可能性があります。
上記はほんの一例ですが、顧客管理業務は単なる管理ではありません。店舗ならではの取り組みで商品に触れる、接客を受ける、映像や音や色や匂いで演出する、清潔な展示で魅せる、など、五感に訴える施策展開によってお客様の買物体験をより豊かなものにし、優良顧客を生み出していくことも重要であることを、意識してみてはいかがでしょうか?
3. 店舗運営の代表的な課題
① 本社指示が店舗にうまく反映されない
本社が店舗に指示したい拡販策や商品情報、連絡事項などが上手く伝わらない、指示や意図が店舗に反映されない、ということがあります。店舗もまた、本社からの通達を見落とすことがあります。
本社が店舗状況を把握し的確な場面や手段が確立されていないと店舗にメッセージをしっかり伝えることができません。店舗内においても店舗スタッフに当該情報均一に伝わる可能性は低くなります。
② 事務作業が多くて余裕が無い
前述の通り、店舗業務は多岐に亘ります。しかも店舗は複数スタッフが就業する現場でありながら、お客様も多様。接客対応による販売業務と、各種基幹業務への対応も同時並行で進めるとなれば、とにかく時間が掛かります。
この課題は、各種システム/ツールが分散されていることが原因であることが多いように見えます。特に、報告書をまとめる際の各種数値集計が非常に面倒という声をよく聞きます。
③ 店舗が集中したい業務に時間が割けない
本来であれば店頭にいる時間を多くし接客や売場づくりやスタッフのサポートなどに時間を割きたいところです。
しかし課題①・②に追われていては一番集中すべき業務が後回しになるといったことが起こってしまいます。
④ スタッフ不足による業務負荷が重い
もはや避けられない大きな問題となった人口減少の影響だけでなく、コロナ禍における人手不足、業務の属人化など、スタッフ不足の問題は拍車がかかるばかりです。
店舗運営を安定させるための業務が滞るばかりだけではなく、接客機会を失い販促が十分に果たされない悪循環に陥ります。
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4. 業務効率化 4つのポイント
ポイント1. 業務プロセスの見直し(←課題②・③)
まず、煩雑な業務プロセスを改善すると良いでしょう。それには既存業務の棚卸しを行い、重要度と優先順位を加味しつつ、効率化が必要な業務を見極めることが大切です。
例えば、各業務を「作業レベル(時間軸基準。長・中・短)」と「動作レベル(作業量基準。重・中・軽)」に仕分けし書き出していきます。この際折角なので、スタッフ間や店舗ごとに呼び名が違っている作業は、表記を統一するとその後の改善時に意思疎通がスムーズになります。
次にそれら業務を、売上や客数で作業量が変動する「変動作業」と、客数に関係なく定量的に発生する「固定作業」に分類します。
こうして業務を標準化し評価すれば、どの業務負荷が高いか=効率化を検討すべきかが見えてきます。負荷分散するために、業務担当をスタッフ間で分散させることも一案です。
ポイント2. ナレッジの共有(←課題③・④)
属人化した業務が多い=非効率です。なぜなら替えが利かないからです。「一子相伝」「見て盗め」的な業務が存在しては、店舗の持続可能な成長は到底望めません。
対策としては、業務をフォーマット化しマニュアルを作成することが有効です。正直作成時は面倒と感じるかもしれませんが、それぞれの業務進行のポイントを見直すキッカケにもなります。
どのスタッフが担当しても、質を落とさず対応できるマニュアルには、共通点があります。それは「業務のビジュアル化」です。言葉よりも動画・画像・イラストなどを多用すると、誰もが理解しやすくなります。
また、それらマニュアルをアクセスしやすい環境に置くことも大切です。クラウドなどにアップロードして、いつでも・どこでもアクセスできれば、便利かつ効率的です。
ポイント3. 業務をデータ化(←課題①・④)
経験値や肌感覚によって、商品の売れ筋やお客様の傾向をつかむベテラン店長・エリアマネージャーは多いことでしょう。それらをデータとして記録することができれば、施策の成功例として共有できるようになります。つまり、業務のデータ化です。
たとえば接客数、セット販売提案数、平均購買点数、接客した顧客の属性傾向など、優秀な人材のもたらした結果がデータ化されていれば、経験値や所感を補完した、客観的で説得力のある成功例が出来上がります。
データ化された成功例は他店舗への横展開が容易ですし、データドリブンの志向が強い新人から新たな発想が生まれることもあり得ます。データはポジティブなカンフル剤なのです。
また、業務のデータ化は本社―店舗間に共通言語を生み出します。成功/失敗例がどのような業務によって生じたのか、データを基軸として検証することができるため、双方の認識がズレることが格段に少なくなります。
ポイント4. システムの統合(←課題①・②)
業務効率化のために、様々なシステム/ツールが店舗に導入されています。しかし、各所に都度アクセスし、必要なデータを取り出し、ひとつのファイルにコピペしてまとめ上げるようでは、いつまでも効率化は図れません。
それぞれのシステム/ツールには、目的があります。その中には「ユーザー負荷の軽減」が含まれているはずです。その共通項の実現=システム統合は、非常に理に適った業務効率化です。
勿論、いきなりすべてを統合できるわけではないでしょう。コストもかかりますし、大抵は利活用の定着まで時間を要するものです。
しかしどのシステムも、導入しただけで劇的に効率化されるわけではありません。本社と店舗が連携し、互いがシステムを活用して初めて効果は生まれます。企業のビジョンや経営方針に基づいて目的をはっきりさせたうえで、システムの取捨選択と統合を速やかに進めるべきでしょう。
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