データ活用とはー概論ー

【海外注目レポート】NRF2023に見る最新トレンドー「小売業が今すぐ始められる3つのポイント」

世界最大の小売業の祭典「NRF Retail’s BIG Show」。小売業界の今後を見据える上で重要なイベントです。先日1/15-17に開催された最新回は大盛況。そこで散見されたいくつかのキーワード3点をご紹介しますが、意外にも、小売業がすぐに始めることができるものばかり…ぜひご覧ください。


ミーティング予約TOPICS:

1. NRFとは ― 小売業の未来を占う重要な情報ソース

2. ポイント①「分析とデータ活用の拡大」

3. ポイント②「人工知能(AI)利用の増加」

4. ポイント③「オンライン/オフラインのハイブリッドな買物体験」

5. まとめ


NRF2023_logo

 
1. NRFとは ― 小売業の未来を占う重要な情報ソース

NRFNational Retail Federation 全米小売業協会)は、世界最大の小売業界団体です。米国で100年以上の歴史を持ち、ワシントンD.C.に本部を置き、小売業が社会と経済に与える強い影響力を持っていて、小売業への啓蒙、促進、積極的な情報発信を行っています。
(米国の小売業は年間3.9兆ドルのGDPに寄与し、米国人の4人に1人が小売業に従事していると言われています)

彼らの活動で最大の取り組みが、NRF Retail’s BIG Showと呼ばれる一大カンファレンスです。今年は2023年1月15~17日の3日間@ニューヨーク、世界から70か国・35,000人が参加、出展企業数は1,000以上という、非常に大きな規模で開催されました。昨年まではコロナ禍で参加者も出展社も減少傾向だったのに比べ、今回は非常に盛況だったようです。

前述の通り、今でも米国小売業の規模は世界最大です。それだけ競争の激しい市場であり、自然と小売業の最新トレンドや今後の業界を占う技術・サービス・考え方のほとんどは、このNRFで世界に発信されるわけです。これは日本に関係のない話では決して無く、今後数年の日本国内小売業が進む方向性を見定める上で貴重な情報ソースとなり得ます。

数多くのセッションが開かれ、私も様々なソースを使ってそれらのセッション情報をチェックしました。その結果、何度も登場したキーワード、しかも、小売業がすぐに始めることができそうなポイントを、いくつか見つけることができました。

① "Analytics and Data"
② "Artificial Intelligence (AI)"
③ "Hybrid Online/Offline Shopping Experience"


今回、革新的な技術や手法について新たな提案があったというよりは、すべての活動の根底にあるもの―――データにフォーカスをあて、その活用をどのように進めるべきかを提言する内容が多かったというのは、非常に注目すべき事実です。
上記3点を、セッションで得た情報と私の考察を交えてご説明します。

NRF2023 ダイジェスト動画(英語)

2. ポイント①「分析とデータ活用の拡大」

(特に米国の)小売業の多くでは、顧客行動や嗜好を把握するために、これまで以上に多くのデータを収集・分析しています。これは店前通行量~試着室利用率、各顧客の動線分析を含みます。店舗のIoTセンサー導入は米国市場では既にデファクトで、いわゆる人流データを捉え、来店客→購買客への転換率=購買率(コンバージョンレート)の最適化を意識している小売業が一般的です。

そんな彼らの現在の関心事は「デモグラフィック(属性分析)」。性別・年代を掴むことで店舗パフォーマンスと照合し、適切な商品提案や購買動線を描くことを意図しているようです。地域特性や時間別、場合によっては天気など、様々なデータとの組み合わせでさらに詳細な商品プロモーションやマーケティング企画に反映することもできます。

ここ数年のコロナ禍で変化した消費者の行動変容は、米国でも顕著です。しかし米国は前述の通り、多くの店舗が既に店舗のデータ化を進めています。すると今度は、オンライン=EC、オフライン=店舗を連携させ、拡張された顧客行動を捉えることが重要になり、各社が取り組みを強化している傾向は引き続き見られています。しかし、拡張された顧客行動の小売業側による把握は、個人情報保護の観点で一部に根強い反対意見があり、その普及と大規模展開にはまだ至っていません。
(一部ではその傾向から離れ、オンラインとオフラインをあえて切り離し、それぞれにおける顧客体験の最適化にフォーカスしている企業もあります)

いずれにせよ、店舗データの分析と活用、特に購買率の最適化を重視する経営思想があれば長期的な成功につながることは、これまでの米国小売企業の例からも明らかです。しかも、店舗データの活用範囲が「売上アップ」だけでなく「顧客接点最適化」にも有効であり、データが企業競争力を高めるのです。

++++++++++++++++++
参考: 店舗データ分析・活用分野 注目企業

《海外》Countwise Kepler Analytics
《国内》 Flow Solutions RetailNext
++++++++++++++++++


3. ポイント②「人工知能(AI)利用の増加」

既に多くの米国小売業が、顧客の買物体験をパーソナライズし、その収益を向上させるためにAI(人工知能)を活用し始めています。これは数年前から言われ続けてきたことで、顧客との過去のやり取りをAIが解析し購買パターンを予測して、パーソナライズされたオススメ商品を提示する、というやり方が、多くみられるケースです。

日本の場合、店舗業務にある種熟練工的側面があるのは事実だと思います。経験則や慣れ、感覚知などによって業務が研ぎ澄まされ、熟練した店舗スタッフが育っていくことは、接客重視・人間関係重視の日本らしさ・きめ細やかさを生み出す独自性を有しています。
それは言い換えると、個々人の能力・経験に大きく左右されてしまう店舗の現場を生む原因ともなります。店舗最大の命題である「売上達成」を目指す上で、個々人の感覚知に左右されてしまう状況は、あまり好ましくありません。
その点、AIを活用すれば、スタッフ間のスキル・レベルの並列化が可能です。

店舗分析システムが、店舗データの分析に基づいてリアルタイムに行動提案を、現場にいるスタッフに適宜行う。たとえば―――

接客する際のポイントは?、客単アップなセット販売の組み合わせは?、商品棚出しのタイミングは?、スタッフの休憩タイミングは? などなど…

―――経験や勘に依存せず、客観的な情報に基づいた意思決定をサポートすることで、店舗全体の業務効率化と売上向上が見えてくるはずです。

また、米国では昨今ナレッジベース(Knowledge Base)の活用が進んでいます。いわゆる「人材育成」で、企業内情報・ノウハウ・参考資料の束を管理し、ユーザーがほしい情報に的確にアクセスが可能なシステムです。社内研修やスキル取得、社内認定制度から、ちょっとした社内ルールの確認まで、多様なニーズの受け皿になり、単に従業員のスキル向上による売上アップを意図したものではなく、従業員と自社の堅固な信頼関係の構築(=離職防止)にも効果的です。
ここにもAIは積極採用されていて、個々人のスキル・レベルに合わせたコンテンツ提供や、個人評価につながるスキル習得の推奨などを、それまでの履歴データなどから解析・自動化しています。これは店舗という非常に忙しい現場だからこそ有効な領域で、Web化・動画化されたコンテンツを短い時間軸でチェックすることで、確実な知識の落とし込み=スキル向上につながります。

【従業員体験の向上で店舗を進化させる Flow Assistant】

弊社FLOWが提供する新機能Flow Assistantは、データと分析に基づいたリアルタイムな行動提案を行います。任意のKPI変動を捉え、改善を促す次の一手「顧客とどのように接するか」「どの商品を勧めたら良いか」などを、チャットBOTの要領で店舗スタッフに自動配信。データがあることで店舗スタッフが確信を持って行動を起こすことができるようになり、迷いのないデータドリブンな店舗経営が実現します。

++++++++++++++++++
参考: AIによるデータ活用 注目企業
 
《海外》Kore.ai
《国内》Flow Solutions
++++++++++++++++++


4. ポイント③「オンライン/オフラインのハイブリッドな買物体験」

前述しましたが、ここ数年のコロナ禍は世界中の消費者行動を変えました。買物体験は完全に、個々のニーズやシーンに合わせて、オンラインとオフラインのハイブリッド型へと転換しています。

当然、小売業はこの流れをフォローしなければなりません。スマホやモバイル機器の浸透は、オンラインとオフラインの境界線を無くすような、新たな買物体験を生み出しました。米国では当たり前のようにECサイトや小売業アプリと店頭スマートPOSが連携したり(いわゆるスマホ決済)、アプリを店内でチェックインすることで店内買物をナビゲートしたり(購買履歴と照合して当該顧客に必要と思われる商品を紹介していく)…進化し続けています。
(この点では中国のアプリの成長が著しいですが、それはまた後日)

情報セキュリティの課題はあるにせよ、消費者がオンライン・オフラインでそれぞれ購買行動するため、それぞれの利用シーンにおいて、小売業としての利便性・パーソナライゼーションを提供する取り組みは、これからの日本小売業界ではさらにトレンドになります。
たとえば、位置情報による近隣店舗案内、ユーザー購買履歴x顧客DB全体→類似ユーザーの購買パターン判別・提案、EC/店舗不問な利用頻度に応じたカスタマイズ・オファーなど、顧客ごとにアプローチする取り組みが一般化していきます。

NRFでも話題となっていたメタバース(アバターサービスとは異なる)は、まだ黎明期です。目新しさはありますが、今はまだ各社、目を細めて様子を見ている印象はあります。しかしその市場性は高く、ここにEC・店舗が連携することでより深い階層の買物体験、特別感が醸成されることは、ほぼ間違いないでしょう。

つまり、顧客体験と最適化された買物体験におけるエキサイティングな進歩は、まだほんの始まりに過ぎないのです。

++++++++++++++++++
参考: オンライン/オフライン連携 注目企業
 
《海外》
Shopify
《国内》iRidge
++++++++++++++++++

NRF2023_Big_Show
NRF2023の様子

5. まとめ

これらのトレンドは、今後数年で世界・日本の小売業界の方向性を変えていくものと思われます。とはいえ、技術トレンドやビジネスモデルは絶えず変化するものですし、それに都度追随していてはいくら投資額があっても足りません。

しかし、今回ご紹介した3つのポイントは、ここ数年の小売業全体のトレンドを鑑みて、全くブレない方向性です。最新のNRFイベントでここまでデータに言及したということは、いよいよ、データ活用の本格的な普及と進化が始まる予兆だと、私は感じました。

++++++++++++++++++
NRF
2023 EVENT RECAP

++++++++++++++++++


Flow Solutionsサービス詳細について
こちらのeBookをご覧ください。
eBookをダウンロード  Flowサービス紹介資料



■ Flow Solutions 会社概要
「リアル空間とそこで働く人々の環境を、データでよりスマートに」


店舗分析に関することなら何でも
お気軽にお問い合わせ下さい!
 お問い合わせ 

Similar posts

メールニュースを購読

ブログ更新情報をメールで受け取る場合はこちらのフォームよりご登録ください。