コロナ禍において生活の変化、イノベーション、買い物という行為に対しても様々な考え方の行動が起こりました。今回は望月智之著「買い物ゼロ秒時代の未来地図 2025年、人は「買い物」をしなくなる〈生活者編〉」のレビュー(前編)をお届けします。
1. 本の概要
2. 著者プロフィール
4.「目的系コマース」と「発見系コマース」
1. 本の概要
タイトル:
買い物ゼロ秒時代の未来地図 2025年、人は「買い物」をしなくなる〈生活者編〉
出版社:
株式会社クロスメディア・パブリッシング
コロナ禍の中で、「2025年にこうなる」と予測していることが前倒しで起こり始めている。EC・D2Cの台頭、リアル店舗の逆襲、つながり消費…。日米中のデジタル消費の最先端を知る専門家が徹底予測する。
※本書は2019年に出版された、【買い物ゼロ秒時代の未来地図 2025年、人は「買い物」をしなくなる】の続編です。
前作のレビューはこちら
2. 著者プロフィール
望月智之
東証1部の経営コンサルティング会社を経て、株式会社いつもを共同創業。同取締役副社長。番組ナビゲーターを務めるニッポン放送「望月智之イノベーターズ・クロス」などのメディアに出演。
3. コロナ禍が買い物のプロセスの短縮を加速
著者は2019年に出版された前作で「買い物のプロセス」において、今後さらにデジタル化が加速し効率化が進んでいくことを予測していました。
この前作はコロナ禍以前に出版されたものであり、2020年におきるパンデミックについては知る由がありませんでした。
しかし、コロナ禍以降、現在の状況が著者の予測した内容の通りになっている、という読者の声が相次いで寄せられたそうです。
これらが示していることは、コロナ禍においての多くの生活の変化(リモートワーク、配達サービスの需要増加など)や「買い物のプロセス」の変化が、決して想定外の方向に進んだわけではなく、単に予想されていた未来が早送りされ数年早く訪れているだけ、ということが言えると思います。
本著は序章から第5章までの構成で、「買い物」にまつわる現在から先の未来について予測しています。
4.「目的系コマース」と「発見系コマース」
消費者の買い物行動の中で、デジタル中心の商品選び、購入行動が広まっています。一つは「目的系コマース」と呼ばれるもので、日用品や食品など、生活必需品が分類されます。
買うものがあらかじめ決まっており、買い物にかける時間をなるべく少なくしたい、というような商品がこの分類となります。
もう一つは著者が「発見系コマース」と呼ぶもので、いわゆるSNS上で「バズって」いる商品であったり、クラウドファンディングによってこれまで存在しなかった新しい商品が開拓されることです。
「発見系コマース」の場合は商品自体の機能よりも、話題性や、商品開発のストーリーに対して注目が集まる傾向があります。
また、SNSの進化により「インフルエンサー」によるレコメンドショッピングという新しい商品の見つけ方も増加しています。
5. 重視される「つながり」
インフルエンサーの例にある通り、これまで多かった「家族みんなで百貨店に行く」買い物のスタイルが徐々に少なくなるかわりに、知らない人同士が同じ趣味やネット上のコミュニケーションでつながり、同じ価値観の中で情報収集をして購買行動を行うくスタイルが増えてきました。
これらは口コミや公開ウィッシュリストなどのサービス等に代表されるものです。
家族・友人などのリアルでのつながりが重視されていたこれまでのスタイルから、インフルエンサー、SNSフォロワーや"「リアルでは知らないが"同じコミュニティ同士」の「弱いつながりを重視した買い物行動」はこれからも増加していくと考えらています。
6. 100%ネットで買い物生活?
2020年、2021年はコロナ禍における外出制限の最中、様々な配達サービスが進化しました。
著者曰く、家から一歩も出ずに生活することも不可能ではありません。
著者の40代の知人は、コロナ禍の数か月ほとんど家から出ずにネットで食料や日用品を調達して生活していたとのこと。
仕事はすべてテレワークで行い、余暇の娯楽は「Amazonプライム」などのサブスクリプションサービスを利用します。
彼は近所のコンビニに行くなどの最小限の外出すら行っていませんでしたが、生活上大きなストレスはなかったそうです。
私自身も緊急事態宣言中は、ほとんど外出しない生活を送っていましたが、すべてをネットで賄うという発想はなかったので、今後機会があれば試してみたいと思います。笑
7. デジタルシェルフの重要性
コロナ禍においては、「人の動き」が大きく制限され、いわゆる「一等地」に店舗を出店することがあまり意味をなさなくなっているといえるでしょう。
日用品の買い物なども近距離圏で済ませるケースが多く、リモートワークの増加に伴って、郊外への転居を検討する人も多くなっています。
これからはリアルの「一等地」への出店が減少していくとと同時に、郊外への店舗出店がさらに多くなることが予想されています。
また、人の動きが少なくなる一方で「物の動き」は活性化しており、顧客は「どこの場所で買うか」をあまり重視していない傾向にあります。
特にネットショッピングの世界では、デジタルシェルフ上でより「目に留まる」こと、他社より「目立つ場所に表示される」ことが重視されており、デジタルの「一等地」の奪い合いはコロナ禍以前より激化しています。
8. 消費者は「失敗」を恐れている?
皆さんも新しい商品の購入検討の際に、「レビュー」を購入の判断基準としている場合が多いでしょう。
米PowerReviewの調査ではオンラインでの買い物客の97%がレビューを読んでおり、89%がレビューを購入の際の意思決定の基準としている、と回答しています。
これは裏を返せばレビューを気にしない人は全体の3%のみということをを示しており、実店舗においても顧客が店舗に来る前に、その製品やサービスついてリサーチを行っており、時には店員よりも顧客のほうが商品やサービスに詳しくなっていることも珍しくありません。
今後は実店舗でもAIを使ったレコメンドなどが浸透していくと考えられ、iPadデバイスなどを利用した接客が増えていくことも考えられます。
著者はこれを店員の「デジタル武装化」と呼んでいます。
9. 生活スタイルの変化
2020年は様々な行動の変化が起こりましたが、著者はこの変化について2020年から2025年までの5年間が約1年に圧縮されている状況であると語っています。
おそらくこの方向性は、コロナウィルスに対するワクチンや特効薬が普及した未来でも大幅に変わることはなく、生活スタイルや、買い物スタイルはさらに効率化されていくことが予想されています。
気になる後編はこちら
【書評】(後編) 買い物ゼロ秒時代の未来地図 2025年、人は「買い物」をしなくなる〈生活者編