O2O、オムニチャネルなど、これまでにも様々なリテール戦略がありましたが、次に押さえておくべきキーワードは「OMO」です。といっても、OMOがどんなものなのか理解できていない、リアルな事例が見えていない、という方も多いのではないでしょうか?
先日、Repro株式会社が主催するコミュニティイベント「aCrew」に参加してきました。テーマは「OMOによる顧客体験向上」ということで、先進リテーラーと、オムニチャネルを促進させるデジマ先進企業の方々の、熱〜いOMOトークをお聞きすることができました【こちらは2019年8月22日に公開された記事です】
こちらでは、その内容について特別にレポートさせていただきます。
TOPICS:
そもそもOMOってなに?
パネルディスカッション概要
そもそもOMOってなに?
今回のお話の前に、まずはOMOについてです。
OMOとは、店舗(オフライン)とオンラインの垣根をなくすことを意味し、顧客体験向上をベースに考えられています。スマートフォン端末での決済やデータ収集・活用により、お客様に寄り添った、快適でストレスのない買い物体験を実現するためのマーケティング概念です。
今回参加させていただいた、aCrewについて
「aCrew(アクルー)」は、マーケター、PM、エンジニアなどサービスの成長を目指す全ての方に向けたコミュニティです。世界59か国6,500以上の導入実績を持つCE(Customer Engagement)Platform Reproを提供するRepro(リプロ)株式会社様が主催されています。
様々な抱える課題を共有しあい、解決・支援を目指したコミュニティとのことで、アットホームな雰囲気ながらも、熱量のある素敵な空間でした!様々なイベントを開催されているようなので、気になる方はチェックしてみてはいかがでしょうか?
パネルディスカッション概要
登壇者
株式会社パルコ CRM推進部 業務課長 塩谷 旬 氏
株式会社ピーチ・ジョン カスタマーデライト向上インフラ推進部 カスタマーデライト向上インフラ推進課 課長 宮澤 雅行 氏
オムニチャネルコンサルタント 逸見 光次郎 氏
株式会社アイスリーデザイン 代表取締役 芝 陽一郎 氏
株式会社オプト オムニチャネルイノベーションセンター OMO戦略部 部長 本郷 一也 氏
モデレーター
Repro株式会社 BizDev 執行役員 吉澤 和之 氏
イベント内では、小売・デジマ先進企業の豪華なメンバー陣による、パネルディスカッションが行われました。
OMOをどう捉える?
ここからは今回のパネルディスカッションの内容について振り返っていきます。
まずは、各社が考えるOMOについてです。
オプト 本郷一也氏 ー
リアルな場所でも高速なPDCAを回せる世界
オムニチャネルコンサルタント 逸見光次郎氏 ー
いかにリアルとネット・デジタルを繋げるか
お客様・従業員(経営や現場)にとっての便利でシームレスな体験
アイスリーデザイン 芝陽一郎氏 ー
顧客側の利便性のみでなく、顧客の評価から人事評価まであらゆる社内プロセスを変えた
ピーチ・ジョン 宮澤雅行氏 ー
店舗とウェブの行き来でお客様を動かすのではなく、動きやすい環境をつくる
スタッフのモチベーションや意識を変える
パルコ 塩谷 旬 氏 ー
お客様にデータを提供してもらうことに値する、顧客体験の提供
データ活用は企業起点ではなく、顧客起点で形づくる
冒頭でも概念的な説明はさせていただきましたが、実際の声はまた違って聞こえますね。データ活用のプロセスとゴールの、よりリアルな側面が見えてきました。
OMOの取り組み・課題について
ピーチ・ジョン 宮澤雅行氏 ー
店舗在庫がない場合にウェブで在庫があった場合、お客様にウェブでの購入を勧める施策をとりました。クーポンをお渡しする取り組みを、まずは2店舗で3ヶ月ぐらいテストを行い、うち1店舗は積極的に利用・もう1店舗は消極的という結果となりました。なぜこれをやるべきなのかが見えないスタッフと、提案の幅が広がったと思うスタッフの、2つの意識の差が見えました。また、地域によってお客様の利用率が全然違うことも発見でした。一方、ウェブにしか売上が入らないという部分で、スタッフの評価に繋がらないことが難しいと思いました。
では、経営視点でOMOに関して、どのような評価方法が考えられるでしょうか?
オムニチャネルコンサルタント 逸見 光次郎 氏 ー
売上=評価をどう切り離すことができるかをずっと考えていました。結果的に、ネット注文・店受け取りの売上は全て店舗につけて、評価はEC側にいくらの売上関与としてつけます。これをEC関与売上と呼んでいますが、全社的にOMOが進み、評価の奪い合いが無くなります。いかに整理して評価をつけるかが重要です。
各社OMOに課題を感じたこと・それを乗り越えるために行ったことは?
パルコ 塩谷 旬 氏 ー
前職(KFC)では、デジタルがどれだけ売上に繋がるか、計り知れないという課題がありました。例えば店舗スタッフから、お客様への「アプリをお持ちですか」という声がけの目的について問われることもありました。ロイヤリティが高まり、リピートが増えることを論理的に訴えていましたがなかなか難しかったです。そこで、機能拡充やサービス展開を通して、お客様にとって楽しめる仕組みづくりを行い、店舗へも"やらなければ"という意識が届くようにしました。こうして、データ収集までの循環が作られるようになりました。
アイスリーデザイン 芝陽一郎氏 ー
ECから店舗送客など、お客様と色々な施策を検討しましたが、店舗アプリをつくりました。EC購買状況・店舗在庫状況がわかる方が効果があるとわかりました。
ピーチ・ジョン 宮澤雅行氏 ー
在庫確認の度にバックヤードに戻っていたので、この時間と手間を改善できるようになりました。また店舗間移動についても楽になりました。また、全店へ拡大する際には、アプリを利用する日・しない日の売上の違いや、スタッフの意見をまとめて、経営層に共有しました。
施策提案する側が感じる、事業者サイドの課題は?
オプト 本郷一也氏 ー
情熱オーナーがいて、さらにその情熱オーナーが権限を持っていない限りは、大きなデジタルシフトの話がなかなか前に進まないと感じます。小さな成功体験を少しずつ積み重ねることで、社内構造自体が変わっていく事例もありました。
オムニチャネルコンサルタント 逸見 光次郎 氏 ー
やるべきなのはわかっているが、どのように行えばいいのかが、わからないオーナーがいらっしゃいます。お客様がどのぐらい買ってくれているのか、売上を分解して考えることで、どういうコストがどのような成果につながるかを見せることが重要です。
この他にも、CMOとしてのマーケターが不在であることや、部門同士の関わり合いが少なくないことがOMO実現の課題として挙げられました。また、KPI設定や、チーム構築が重要であることが見えてきました。
リアル店舗の効果測定・自社のデータ活用について
オプト 本郷一也氏 ー
位置情報周りでいうと、世界で一番データを持っているのはGoogleで、その次がキャリアになります。GPS・位置情報の来店促進は当たり前に行っていますが、特に注目されているのが、自社と競合店舗の位置情報ユーザー分析です。広告のみでなく、店舗の店づくりを踏まえたサービスが注目されていると感じています。
アイスリーデザイン 芝陽一郎氏 ー
ユーザー行動の時系列データをトラッキングすることができるサービスがあります。ウェブでの見せ方、アプリでの見せ方、店舗の見せ方をユーザーの行動を見ながら、変えていくことができる時代になってきていると思います。
オムニチャネルコンサルタント 逸見 光次郎 氏 ー
Amazon Goのような店舗のユーザー行動と、ウェブでのユーザー行動のログを合わせてみることができるような世界になってきていますが、個人情報保護含めて、どこまでがお客様の許容範囲なのかが問われています。データ活用とその許諾範囲は課題になっています。
ピーチ・ジョン 宮澤雅行氏 ー
お客様が気持ち悪く感じない距離感が重要だと思います。やり方は気をつけないとお客様も離れていってしまうので、データがあるからいいのかというと、そうではないですね。
パルコ 塩谷 旬 氏 ー
アプリ・LINE・SNSなど、あらゆるプラットフォームでコミュニケーションを行なっていくと、時に過剰になってしまう場合もあります。どのプラットフォームがどんなコミュニケーションに適しているのかを考えることが、まずは大事ですね。
また、注目のトレンドとしては、海外との決済プラットフォームの違い、RFIDの新たな店舗利用の形、店内分析カメラの活用などが話題に上がりました。
OMOをはじめる方へのアドバイス
アイスリーデザイン 芝陽一郎氏 ー
部門を束ねた方がいいと思います。また、各企業の担当者によってプロジェクトの成功度は変わると感じます。DXを成功させるには、各営業や現場からキーマンを連れてくることのチームの組成や、ある程度のプロジェクトのスピード感・トライアンドエラーを繰り返しながら取り組むことが必要です。
オプト 本郷一也氏 ー
店舗の方々のデジタルへの意識がないことも多く、担当部門だけでプロジェクトを行うのは、なかなか社内の賛同が得られにくいと見ていて思います。店舗のスタッフさんにも成功体験を感じてもらい、成功体験を積み重ねることが経営層やステークホルダーを動かすことにも繋がります。店舗スタッフさんが働きやすい環境をつくるという視点を忘れないでいただきたいです。
オムニチャネルコンサルタント 逸見 光次郎 氏 ー
成功のコツは、在庫管理と評価をきちんとすることです。在庫管理が売上にも影響するので、流動を見える化して、合理的に理解してもらうことです。評価は、まずKPIを見える化して、それらをプロジェクトの共通指標にすることを勧めます。賛同を得られ、各部門の横の繋がりも理解しやすくなり、結果的に経営にも繋がっていきます。
ピーチ・ジョン 宮澤雅行氏 ー
部署間をとり持つような誰かが先導して、プロジェクトを引っ張っていかなければいけないと思います。
パルコ 塩谷 旬 氏 ー
お客様・社会の課題解決に繋がっているかというのを念頭に置きながら、コミュニケーションやデジタル推進、CRM、OMOを考えています。そうすることで、どんなポジションでも共通のトーンで話すことができるようになるので、業務を行う際に意識していただければと思います。
いかがでしたか?
OMOをはじめDXには、チームや環境づくり、目標とモチベーションづくりが欠かせない事項として挙げられていました。また、どの企業様もトライアンドエラーを繰り返しながら、スタートスモール・スケールファーストで成功に向けて動いてきた、というのが全体の印象として残りました。
OMOやデジタル推進にお悩みの企業さまは、ぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか?
OMO推進には、まず基本的な店内顧客行動データを収集することも重要です。私たちと一緒に取り組んでいきましょう!
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