[インタビュー]「実店舗+EC」戦略の川添氏に聞く!「店舗デジタル化の重要性」待望の続編!

by Izumi, on 2018/10/23 12:43:08

 こんにちは、Flow Solutionsです。現在、小売業界をはじめとした様々な方へお読みいただいているこちらの「リテールパフォーマンスを高めるブログ」に、スペシャルゲストをお呼びしました!

 9月実施のセミナー「来店客分析×コミュニケーション効率化」でのセッション「店舗デジタル化の重要性」での反響を受け、Flowとしても「さらに小売・アパレル業界を盛り上げるための企画を」という思いから、今回もビジョナリーホールディングスの川添氏へインタビューを行いました!こちらの記事で、そのインタビューの様子を丸ごとご紹介します。

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川添  隆 氏
ガールズアパレルブランドでのEC責任者を経て、現在はメガネスーパーの親会社であるビジョナリーホールディングスの執行役員を務める川添氏。書籍 [「実店舗+EC」戦略、成功の法則]の執筆、ECzine連載でのあらゆるアパレル・小売企業との対談や執筆、セミナーなど情報発信をしながら、企業のEC・オムニチャネル推進を図っております。
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川添さんのプロフィールはこちら

 店舗とデジタルの関係について、これからの小売業界・マーケティングのトレンドなども含め、たくさんのお話を伺うことができました。業界へのパッションが伝わるこちらの記事、ぜひ最後までお読みください!


「ECの売上規模がどんどん大きくなっていますが、店舗はこれから何をすればいい?」

 現在、いくつかのアパレル企業もEC化率は伸びてきていますよね。これからの小売業で求められる、リアル店舗の役割について教えてください。 

 先日のアドテック東京2018のあるセッションの中で、「価値のある顧客体験に必要なのは、アナログとデジタルどちらでしょうか?」という話が出ました。ここで考えさせられたのは、お客様への「価値ある体験=いい体験」って何だろうかということです。

 同じく、このセッションで、LDH JAPAN 執行役員 CDO長瀬さんが言われた「期待値をデザインする」という考え方に非常に感銘を受けました。例えば、3,000円のディナーに対して、10,000円を支払ってもいい思えるほどのお店の雰囲気、料理の味、スタッフの気の利く応対があれば、感動しますよね。このように最初に想定していた期待値を上回ったときに、お客様に感動や喜びを感じていただき、それが「価値ある体験=いい体験」になるはずです。

 ただ、その感動をデジタルのみで完結させようとすると難しく、今のところデジタル空間では視覚や聴覚でしか体験することができないからです。モノやサービスにおける期待値に対して、より多くの豊かな体験を提供することができるのは、今のところ、リアルな空間での体験であり、そこにリアルの役割が存在します。

 一方、事前の期待値をどう提供するかは、よりデジタルの方が多くの情報や多くの表現によって膨らませることに適していて、リアルとデジタルの役割というのはそういった観点で位置付けることができるのではないでしょうか。


「来店客数・購買率といったKPIについて、どのように考えていますか?」

 前回セミナー時に、来店客数や購買率といったKPIがわかることで次の打ち手を考えたり、質の高いコミュニケーションを行うことに繋がっているというお話をさせていただきました。実際、来店客数や購買率といったKPIという要素は、小売・アパレル業界においてどのように捉えられていますか?

 こういったKPIは数値を眺めるだけでなく、どう活用するか、どうアウトプット(実行)するのかが重要です。来店数が増えた、購買率が増えたときに、「何で上がったのか」を考えるのはお店であってもECであっても変わりません。仮にECの基礎的な結果数値が取れるように、店舗でも数値が取れるようになれば、むしろリアル店舗の方が数値の理解を深めることはできると思います。ECの場合もいくつかの数値結果が見えるんですが、そこからどの施策が当たったか?なぜそのような結果になったのか?顧客には何が響いたのか?というようなことは、見つけるのが難しいです。 

 また、その結果にも複数の要因があります。その施策自体が本当にうまくいったのかを見るためには、その人がどう仮説を立てていくか、結果に対する仮説と施策、それを紡ぎ出すためのストーリーが大切です。ここで気を付ける必要があるのは、ストーリーによって事実を捻じ曲げてはいけないということです。 

 店舗で例えるならば、店舗の顔となる商品のレイアウト変えたとしましょう。それにより、足が止まる人が増え、手に取る人が増えたり、手に取らずともほかの商品を見る機会が増えれば、「商品のレイアウト」が基点になっていることは把握できます。また、何が気になったのかを直接聞くことができます。サイト内の行動は細かく分析すれば把握できるものの時間を要したり、直接聞くことがまでは難しい。すなわち、パズルが足りないのです。ECではこういった足らないと思うパズルが多すぎるのですが、リアルであれば現場の動きとリンクさせることでよりシンプルに考えられるので、面白そうです。

 店長会や定例会で、施策の効果測定だったり、これから行う施策の会議を行うときに、こういった動きを見るために数値を使えます。データを見るリテラシーのない場合には、デジタル担当が翻訳したり、すでにそういった翻訳機能があるものを使うのが良いです。一歩手前のエリアマネージャーやマーケティング、店舗開発チーム、そういった中枢の位置に当たる担当者にデータを与えて、最終的には店頭に立っている現場に武器を渡す。そして全体で引き上げるといった図が理想ですね。


「店舗において、スタッフ=人がブランドの中心になることはできますか?」

 商品やプロモーションなどはブランドらしさの一部を作れますが、そこは真似しようと思えばどの企業でも出来ます。どういう意志、どういう風に思ってもらいたいというブランドの核をもつことが重要です。ここがあることで、ブランドとしてのコミュニケーションや、チャネル戦略は設計がしやすいのですが、アパレルのほとんどの企業は核がない状態といえるでしょう。そのため、ID連携やポイント連携でデータを統合しても、その次の「顧客にデータを返すためのサービス」がでてこない。一方、専門店は専門性を持つスタッフや、背景のある作り手がいるということがコアにあるので、ここを高めていく必要があります。企業としての軸を持つことで、そのスタッフへ伝わり、お客様へとブランドが伝わっていきます。


「店舗からECに活かすことが多いですが、ECから店舗に活かせることはありますか?」

 店舗をECに近づけるべきことは多くありますが、逆にECから店舗へ活かせることはありますか?

 私自身、店舗からキャリアをスタートし、EC専業で働き、またブランドの事業側へ戻ってきて、リアル・EC両方を経験した中で、リアル店舗の重要さを痛感してきました。物販の小売りにおいてはEC化率は6%程度しかなく、最終購買の場所はリアルの方が多いはずです。まずはリアルで出来る施策は全てECでやりましょうということを、戦略の軸に据えていました。 

 最近は、オイシックス・ラ・大地の奥谷さんから、「Amazon GoのAWSの担当者が『オンラインの素晴らしい買物体験を、実店舗で展開したい」という話に衝撃を受けた」という話を聞きました。それを聞いて、私も衝撃を受けました(笑)。Amazon Goでも、より高い店舗のパフォーマンス、接客レベルを叶えていくために、不要な工程は自動化を進めています。この積み重ねにより、Amazonってやっぱりいいよね、というブランドへの信頼を生むことへと繋がります。ここから言えることは、我々は買物体験自体に愛着が湧くことはないですが、いい体験をすることでブランドへの愛着が高まっていくということです。この高いサービスレベルにより、信頼関係が生まれてしまうと、今後こういった業態に全て売り場を総取りさされる可能性がでてきます。

 ブランドとしては、お客様とのなるべく長く繋がり、コミュニケーションをとりながら、ニーズをつかみ、それをモノ・サービスとしてお返しするサイクルを創り上げていく必要があるのではないでしょうか?デジタルシフト、オムニチャネルといった手段に捉われず、ブランドとしての意志を持ち、顧客の立場で考え・行動できる企業のみが、生き残っていくのではないでしょうか


「デジタルコマース時代の最近のアパレル業界のトレンドとは?」

 どのような施策を行えばいいのか、悩めるアパレル業界の方々へ向けて、ここは抑えておくべきだというアパレルのコマースマーケティングトレンドがあれば教えてください。

 今現在のアパレル・小売の状況として、商品が同質化しています。例えばアパレルの生産における、クイックレスポンスがある種間違った使われ方になり、横の店で売れているものをイチ早くうちで売ろうといった動きになっています。

 また、アパレル業界は、実はデータ分析が荒い部分があります。過去のデータの蓄積による傾向と、直近のECの行動履歴などを紐づけた形で生産枚数を決めるような仕組みにはなっていません。データは過去しか示してくれませんが、それを基に今を判断する必要があります。とにかく今、もしくは次のシーズンをどう乗り切りかにいっぱいいっぱいで、その先の成長戦略というものがなかったりします。

 また、海外のファストファッションがシェアを拡大する中で、ベーシックゾーンが一番大きな領域になっています。さらにこの領域にZOZOのPBNやAmazonのPBが入ってくるでしょうし、その一方で対極にあるラグジュアリーは好調です。

 この市場で、これまで「アパレルブランド」と呼ばれた、トレンドファッションを発信しているブランドは、中途半端になりがちです。安くしようとすれば国内外ファストファッションの方が品質が高く、ブランドの格を高めたり、デザイン性を高める手段を持っているところが少ないため、どんどん苦しくなります。なおかつ、営業において、値下げ以外の手段はなかなかありません。

 この中で状況を変えていくためには、これから・今の2軸で考えることができます。

ーこれからどうするか

「変わらないと未来はない」というような雰囲気は出てきたと思います。ただ、将来設計の間違いはして欲しくありません。

 例えば、オムニチャネルを推進するのは、顧客に対応するために必要だとして、その土台といされるデータ統合によってデータをどう使うか、がすごく重要です。例えば、ナノ・ユニバースではお気に入りした商品がどの店舗で買えるかをアプリで表示していますが、それだけなら、顧客のデータ統合は不要です。ただし、統合することで、行動パターンによってお客様を塊でとらえることができて情報送信を最適化することにつながったり(ここまでややれているかはわかりません)、店舗で購入された後のもサンクスメールが届くのは気が利いていますよね。他にも、アダストリアのドットstのアプリでは、購入した商品のコーディネート情報を見れるようにしていますが、ECだけでなく店頭で買った商品でもコーデが簡単に見れるのはうれしいですよね。お客様にとってのメリットがある使い方ができるのであればいいです。

 アパレル企業は結局買ったあとに服をどう使うのかといった、「これから」を考える必要があります。買った商品の返品・交換だったり、あとはコーディネートの提案だったり。買った商品を元に提案してくれるようになったり、そのお客様が信頼するスタッフがレコメンドしてくれる商品がわかったり。そういった意味のある統合でなければ、意味がありません。いわゆるショールーミングだったり、顧客データ統合だったり、というのが一人歩きしてしまっているので、ここには危機感があります。

 この進行を阻むものの1つとして、ディベロッパーの依存度が高いことが挙げられます。契約としてEC部分の定義がないため、店舗売上が減る施策はNGになりますし、百貨店であれば顧客情報の取得が基本NGだったりします。こういった旧来の商慣習が、足枷になるというケースも多いでしょう。しかし、向かっていく方向はブランド側としてでなく、興味を持ってくださるお客様に対してどういった体験をお返しするかというのを重きを置く必要があるのではないかなと思います。炎上してでもブランド主導で実験をして、双方の理解や新たな契約形態を作っていく必要があるでしょう。

 もの作りにおいて、データの蓄積・分析もしていない、データドリブンなマーケティングが行われていないというのは、AmazonやZOZOTOWNといった他の分野からの企業が入ってこれる隙を与えてしまっています。


ー今、どうするか

 今の状況を打破するには、正論はいりません。確かに、データをすべて蓄積・分析できるのが理想だとしても、今それができる環境でなければ、今取れるデータから判断をして精度を高めればよく、そのナレッジから蓄積をすればよいのです。

また、投資の優先順位として、購入のハードルを下げるための仕組みから始めたり、例えば、Flow Solutionsの「InSight」のようなツールを導入するならば、「全店の分析」が理想だとしても、ブランドの事業としてインパクトが大きい一部の店舗からはじめるというような順序のつけ方。小さく始め、スピーディに結果を出して、リターンが出せれば次の投資というサイクルを作っていくことから始めましょう。仮にお金が使えなくとも「スピード」というのは、唯一強者とも戦える最大の武器であり、高速PDCAを実現していけば、利益を増やしていくことは不可能ではありません。投資の優先順位づけ・施策の優先順位づけを行って、蓄えて、その先の未来に投資していく、この両輪が必要です。


ありがとうございました!

こちらのインタビューから、リアル・デジタルといった手段に関わらず、お客様にとってどのような感動体験を与えられるか、ビジョンを持って施策を行うことが重要だと考えさせられました。

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