店舗で販売活動に従事するスタッフの存在は、小売業において大変重要です。
1. シフト作成での悩み事
2. お客様はお店に何を期待しているのか?
1. シフト作成での悩み事
店舗管理を任されている店長は、多忙な中、売上を最大化するためのシフト組みが求められます。店舗規模によって業務内容は変わってきますが、いずれにせよ大きな負荷が掛かるものです。
たとえば…こういうお悩みはありませんか?
・スタッフを確保できない(絶対数が足りない、バイトやパートの欠勤が多い)
・どの曜日・時間に、どのスタッフをあてたら良いのか、見当がつかない
・限られた人件費で、どのシフト組みが一番効率的なのか、わからない
・毎月の本部報告や人件費交渉が大変(事実上不可能)
・人員追加を許可されたとしても、売上増の保証もなく自信がない(対策がない)
・日々の業務で忙殺され、シフト管理に時間をかけることができない
これらの悩み...いずれの場合もほぼ共通して言えるのが、「シフト組みにあたって何らかの指標となる存在」があれば、それらの悩みが軽減/解消される可能性がある、ということ。なぜそう言えるのか?...こちらについては記事の後半でご説明します。最後までお付き合いください!
2. お客様はお店に何を期待しているのか?
シフト組みを検討する前に、今一度立ち返っていただきたいことがあります。それは「お客様は、あなたのお店に何を期待をして、足を運んでくれるのですか?」ということです。
店舗の雰囲気、清潔感、商品の見やすさ、自分のサイズや色の好みに合った商品の発見、心地良い買物体験、驚き、ワクワク、自分の嗜好に寄り添ってくれる接客…などなど。
では、そういった体験を提供し、お客様に満足いただけるようにするには、何が大切だと思いますか?
店舗の清潔感?、説明不要な店内の商品陳列?、アプリ経由でのお客様とのコミュニケーション?、快適な店内BGMと空調?―――確かに、どれも大切なポイントかもしれません。
しかしまずは大前提、「接客」を考える必要があるのではないでしょうか。
貴社の店舗では、時間毎のお客様の数を把握し、時間毎に適切なスタッフ人数を配置していますか?貴社は、エリアマネージャーは、店長は、その実態を即答できますか?
もう少し具体的にお伺いします。
スタッフひとり当たりの接客人数/時間が最大5人であるにもかかわらず、実際は10人の接客を任せている…ということはありませんか?しかもそんなケースが、お店のピークタイムと重なっていたりしませんか?そういう事態を、本社や店長はきちんと想定されていますか?
もうお分かりかと思いますが、「時間毎の理想的な接客数」を知ることが、この上なく大切なのです。
もしまだ把握できていないのであれば、今すぐできる取り組みとして以下をオススメします。既に考慮済な項目もあるかと思いますが、改めて整理する意味でもご確認ください。
ーーーーーーーーーーーー
① ピークタイムの把握
これまでの経験知、肌感覚でも構いません。できるだけ細かい時間軸で来店客数の山を明らかにします。「水曜日の午後5時~7時」「土曜日の午後1時~3時」など、曜日と時間を特定できれば、その時間帯に適切なスタッフ編成を思案することができます。
ーーーーーーーーーーーー
② スタッフのサービス・レベル分け
売上実績と接客の質をA・B・Cに分類し、全スタッフをスコアリングします。これはスタッフの優劣をつける行為ではなく、店舗売上の最大化とスタッフ全員の負荷軽減を意図したものです。そして、特定のレベルのスタッフを特定のシフトに押し込めるのではなく、適度にバラけさせてバランスを取ると良いでしょう。偏ったシフト編成では、サービス・レベルの低いシフトがピークタイムと被る恐れがありますし、いつでも均一なサービス・レベルを店舗が提供することができず、売上にムラが生じる可能性があります。留意したいところです。
ーーーーーーーーーーーー
③ ピークタイム以外の業務検討
①が把握できれば、それ以外の時間帯にその準備や他の店舗業務に従事する時間を設定することができます。「水曜日の午後5時~7時」がピークタイムだとすれば、その直前1-2時間は、接客が得意なスタッフを店頭に残し、それ以外のスタッフで「店内陳列整理・店内美化」「エントランス展示の確認」「売れ筋在庫の検品と品出し準備」などに時間を割くことも考えられます。
これらをより精緻に進めるには、特に①において、来店客数をしっかり把握することが肝心です。来店カウンターなどのセンサーをエントランスに設置すれば、時間別の来店客数推移が自動で計測できます。
とても興味深いことなのですが、店舗スタッフが肌感覚で認識していたピークタイムと、センサーでの計測結果が異なることが、往々にしてあります。これは、肌感覚=店舗業務をしながら得た経験知なので、ご自身が忙しいと、「店舗全体もきっと忙しいからお客様が多い」と認識する傾向があるためです。このズレが微妙な売上アップのタイミングのズレを生み、大きな機会損失を招きかねません。(だから、弊社FLOWはセンサーによる来客数計測をお薦めしています!)
ピークタイムを把握し、そこを基にした適切なシフト組成を行うことが、お客様への良質な買物体験の提供となり、売上最大化の近道となるのです。どんなに店舗が混雑しても、上記のようなポイントをおさえたシフト組成ができていれば、基本的に慌てる状況が少なくなりますよね。
その経験によって店舗全体が「予め予測した事態に対する対処」を習得し、微調整を繰り返しながら、さらに精緻な活動を目指すことができると思います。
3. シフト作成をやりやすくするために
繁忙期は、予測以上の来客で大忙し・高い売上があることもあれば、天候や近隣のイベント等で来店客数が激減することもありますよね。また、どうしてもスタッフ人数の確保が出来ない時など、やむを得ない状況もあるでしょう。
そんな時には、今いるスタッフ人員でどう売上を最大化できるか?、いち早くマインドチェンジをして、優先度の高いものに取り組めるように人員を配置することが必要となります。例えば…
・来店客数が多いと、レジ前が混雑しがち。レジ待ち行列が多くなるとしびれを切らして購買を諦めるお客様が発生、売上機会損失=勿体無い!
→ レジを追加で開けることが一番得策です。しかし人員的に厳しい場合、レジ待ちのお客様への声がけによるケア、レジ付近の小額商品の陳列によるついで買い検討促進、モニターをレジ付近に設置して動画を放映(飽きさせない)、などの工夫も有効かもしれません。
・アパレル業などの試着室での接客は、セット率や購買率を上げる最適な場所!
→ 人気エリアの整理整頓や導線の確保などは、店内滞在時間に好影響をもたらします。商品を手に取る行為とは違い、商品を試着する=商品を身につけた状態を確認したい=購買まであと少し、の状態なはず。ここでの接客に専念するスタッフがいても良いかもしれません。
・繁忙期でありがちな「乱雑に置かれた商品」や「見にくいディスプレイ」。そのままにしておくとブランドの印象も悪くなる!
→ 繁忙期だから仕方ないと、店内の乱れを放置することはNGです。お客様の買物体験上、店内の乱雑さは購買行為に心理的に悪影響を及ぼします。常に気を配る、は人数的に難しい場合は、せめてピークタイム以外の時間帯に定期的に、店内整理する時間を予め定めておきましょう。たとえその時間に作業できなかったとしても、その意識がスタッフに浸透すれば、自ずとスタッフが無意識に店内整理を常に心掛けるマインドに変化していくはずです。
これらは一例ですが、あらかじめポイントを絞っておき店舗内での優先順位をつけて、不測の事態に陥った時の「作戦」として事前共有しておけば、慌てることなく対処できます。
しかし、これだけではまだ不十分です。最大のポイントが欠けています。
それは、「スタッフのモチベーションをあげること」です。
4. スタッフのモチベーションは上げられる!
どんなに計画を練っても、どんなに効率的なシステムを導入しても、店舗で働いているのはスタッフです。人が、人に、商品を販売する―――シンプルで非常に難しい、奥の深い業務を店舗で行うスタッフたちをフォローし、労い、賞賛することが、現場の空気をポジティブに変えるのは間違いありません。そしてその活気が、売上を最大化する大きなポイントなることを、皆様もよくご存知のはずです。
忙しい営業時間が終わり、今日の売上結果を見ると目標を下回っていて「あんなにスタッフががんばったのに…どうすれば良いんだろう…」と、店舗活動そのものが徒労に終わった気持ちに襲われ、モチベーションが下がる―――店長なら一度は味わったことがある切なさではないでしょうか。
接客を徹底し、お客様の嗜好を感じ取り、購買に導く接客を心掛けているけれど、今日はその結果が思わしくなかった。「今日は全然ダメだったな…これ以上やってもダメかな…」と、半ば諦めの心境に陥り、モチベーションが下がる―――スタッフから漏れ聞こえてくる溜息。
モチベーションを上げるには、賞賛すること。その賞賛のために、業務の検証ができる指標があると便利です。
冒頭に「「シフト組みにあたって何らかの指標となる存在」があることで、それらの悩みが軽減/解消される可能性がある、ということをお伝えしましたが、実はここに繋がってきます。
シフト組みに密接に関係するスタッフのモチベーションで、ぜひ注目いただきたい存在=KPIがあります。それは「購買率」と「客単価」です(購買率はコンバージョン、買入率などとも呼ばれます)。
購買率の計算は簡単です。購買率=購買件数÷来店客数、です。
購買率をスタッフに落とし込むことで、「購買率が高い=効率的に売上を生み出している」という意識が芽生えます。客単価の説明は…言うまでもないと思うのでここでは割愛しますね。
もう少し具体的にご説明します。とあるアパレル店にスタッフAさん・Bさんがいたとします。ある1時間の実績は以下の通りでした。
Aさんの方が購買率が高く、効率的です。では、実際の売上はどうだったのでしょう?
極端な例をあげているので現実的ではないかもしれませんが、上記の通り、購買率と客単価によっては最終的なゴール=売上が同一になることもあり得ます。ということは、Aさんは「客単価」、Bさんは「購買率」に改善のポイントがあるということです。それぞれを改善できれば、さらに売上がアップするのです。
この2つのKPIは、店舗全体が意識することで、売上を向上させる大きな効果が期待できます。スタッフがそれぞれを意識し、接客や店舗業務に勤しむことで、その経過を数値で可視化することも出来るのです。
(客単価はPOSデータから抽出可能ですし、購買率は前述計算式の「購買件数」「来店客数」があれば簡単に計算できます)
客単価は、小売業において常に意識するKPIだと思います。しかしその一方で、購買率に着目している企業様は、あまり多くお見受けしません。
ご紹介したように、「客単価」と「購買率」の組み合わせによって売上改善のポイントが非常に明確になります。特に「購買率」を軸としたスタッフへの指導を行えば、スタッフはより明確な指標を意識し、自身の行動を振り返りやすく、改善のサイクルに当て込みやすい働き方が目指すことができるのです。
つまりは、スタッフのモチベーションと生産性が上がる―――非常に大きなシフト・チェンジが起こると思います。ぜひ、取り入れていただきたい指標です。
関連記事:
・「データがあると(現場は)確認を持って動けます」株式会社デイトナ・インターナショナル様ーUser's Voice ー
顧客データをシフト作成に活かし
売上を上げていく方法をご紹介します!
■ Flow Solutions 会社概要
店舗分析に関することなら何でも、お気軽にお問い合わせ下さい!